眠い。
僕は朝が苦手だ。
夜も苦手だけど、朝はもっと苦手。
ついでに言うと、学校も好きじゃない。
ふ、と息を吐くと壁に寄りかかった。
頬に触れる冷たい感触が心地よい。
暇な時はこうやってボウッとするのが一番だ。
眼下にうごめく人の群れがまるでアリのそれに見える。
耳にクリアに響く喧騒も、ただの雑音と同じ。
(……あ。)
今まで見つめていた窓ガラスに、ひらりと一羽の蝶々がとまった。
素朴な、それでいて愛らしい、モンシロチョウ。
ガラス越しに、そっと指を這わせてみた。
冷たい、ガラスの感覚だけ。
蝶々がふわりと離れていく。
自由な空を、自由に。
僕はもう一度、大きくため息をついた。
クラスで僕に話しかける人なんていない。
話しかけてほしいなんて、思って、ないけど。
冷たい、冷たい壁に爪をたてた。
「風臣」
それほど大きい声じゃないはずなのに、その声はストレートに僕の濁った頭の中に滑り込んできた。
教室の入口から覗く、派手なジャケット。
この場に不釣り合いすぎる。
周りの視線など気にも止めずに手を降るその姿に、思わず口元が綻んだ。
「ユーリ、先輩」
…自由に、なりたい。
そのサングラスに、少し憧れた。
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